教育訓練給付制度は、職業訓練に必要な費用を国が負担してくれる制度です。
簿記検定や情報処理技術者試験などの人気講座が対象に含まれますが、全ての講座が対象となっているわけではないため、事前によく確認する必要があります。
教育訓練給付制度は雇用保険に一定期間加入していることが条件で、申請や手続きはハローワークが窓口になっていて申請期間は受講修了日から1ヶ月以内と短いため、早めの申請をおすすめします。
教育訓練給付制度支給の内容や申請方法、対象講座を詳しく解説。
この記事の目次
教育訓練給付制度とはどういったものか
教育訓練給付制度とは、雇用保険に加入し一定の条件を満たした者が利用でき、自身のキャリアアップに活かすことができる制度です。
具体的には、
- 資格試験の予備校
- 通信教育
- 国に指定されて教育訓練機関による自己啓発
といった職業訓練や能力開発にかかった受講料などの費用の一部を国が負担してくれ、資格の取得や職業訓練を受けることができれば、自身のキャリアアップや再就職時の役に立ちます。
教育訓練給付制度はキャリアアップに活かせる制度
教育訓練給付制度は、2018年1月に拡充された比較的新しい制度。この制度は雇用保険法の一部が改正されたことで拡充された制度で、より多くの人に雇用保険を活用してもらうということが狙いです。拡充された間もなくそこまで認知度が高いわけではないため、制度を活用している人は多くありません。
今までは、雇用保険は会社を離職したときに失業保険を受け取れるものという認識が強く、会社を退職せずに働き続けている人からすると活用する機会が少ないことが課題でした。
この教育訓練給付制度は、ある程度雇用保険に加入し要件を満たしていれば在職者でも利用できるため、今後より多くの人がキャリアアップしやすくなっていくと期待されています。
雇用保険に一定期間加入していることが条件
教育訓練給付制度を利用するためには、一定期間雇用保険に加入していることが条件であり、利用する制度の種類によって異なります。
離職者の方が教育訓練給付制度を利用する場合は、退職日の翌日からカウントして1年以内でなければ利用できないため注意が必要です。
支給金額
教育訓練給付制度で支給される金額は利用する制度の種類によって異なり、一般教育訓練給付金の支給額は発生した教育訓練費の20%相当で、上限は10万円になります。
教育訓練費が高額で、20%相当の金額が10万円を超えた場合でも、支給される金額は10万円となるため注意してください。
また、下限は4,000円です。20%相当の金額が4,000円未満の場合は支給されません。専門実践教育訓練給付金は支給額が増え、教育訓練費の40%相当の金額が支給され、上限は年間32万円です。
一般教育訓練給付金と同様に、下限は4,000円なので注意してください。
教育訓練給付制度の申請方法
教育訓練給付制度を利用するためには、適切な申請手続きが必要です。教育訓練給付制度の申請方法を詳しく解説します。
ハローワークに申請する
教育訓練給付制度を申請する場所は、利用者自身の住所を管轄するハローワークです。必要な書類を用意し、有効な申請期間内に手続きを行ってください。
基本的にやむを得ない事情がない限り、手続きは本人が行う必要があり代理人や郵送による申請は受け付けていないため注意が必要です。
提出書類
教育訓練給付制度を利用するために必要な提出書類は、
- 教育訓練給付金支給申請書
- 教育訓練修了証明書
- 領収書
- 本人・住所確認書類
- 雇用保険被保険者証
- 教育訓練給付対象期間延長通知書
- 返還金明細書
上記になります。
厚生労働大臣の指定を受けている講座や教育訓練であれば、保険証など自身で用意する以外の書類は教育訓練施設が配布しています。
教育訓練給付対象期間延長通知書に関しては、適用対象期間を延長していた場合のみ必要です。
申請時期
教育訓練給付制度の申請期間は、教育訓練を受講し修了した翌日からカウントして1ヶ月以内になっていて比較的申請する期間が短いので注意してください。
必要書類を全てハローワークに提出し、申請が受理されれば教育訓練給付金(一般教育訓練)支給・不支給決定通知書が届きます。基本的には申請完了してから3週間以内に入金されることが多いです。
教育訓練給付制度の対象講座
教育訓練給付制度の対象講座は、厚生労働省のホームページから検索できます。
◎教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム
教育訓練給付制度を利用して受講されることが多い対象講座を見ていきましょう。
教育訓練給付制度の種類
教育訓練給付制度には大きく分けて
- 一般教育訓練給付金
- 専門実践教育訓練給付金
の2種類があります。
一般教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合に、授業料の一部を国が負担してくれるものです。
対象となる講座・職業訓練は、英会話やパソコンスクール、通信教育や予備校による資格取得といったものが含まれます。
専門実践教育訓練給付金も、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合に、授業料の一部を国が負担してくれます。
しかし一般教育訓練給付金と違い、対象となる教育訓練は
- 看護師
- 美容師
- 調理師
- 税理士
- 会計士
- 弁護士
といった専門学校や予備校、大学院の講座というように専門性が高いことが特徴です。
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験とは、IT系の資格の中で唯一の国家資格です。近年ではIT技術の発展により、身近なところでもITシステムが利用されるようになりました。
普段の生活で利用するIT関連の知識を持ち、活用するためのIT技術を有することを証明するのが、情報処理技術者試験という資格です。
IT関連の知識が身につくため、どのような業種でも求められることが多く人気があります。
簿記検定
簿記検定はメジャーな検定試験ですが、実用性が高く企業からのニーズも高い資格です。
経理部門の人員は専門的な知識が求められるため、募集をかけても集まりにくく簿記の知識がある経理社員は人手不足の傾向にあります。
即戦力となる人を採用する企業が多いため、簿記の資格を持っていれば再就職しやすく有利な資格です。
訪問介護員
現在の日本は少子高齢化であり、今後はさらに加速していくことが予想されています。
老人ホームなどの施設に入れないお年寄りが増えるため、訪問介護員(ホームヘルパー)といった資格取得者の需要が高まる可能性は非常に高いです。
将来的なことも考えて、資格取得を検討している方も増加しています。
社会保険労務士
社会保険労務士とは、主に社会保険に関する手続きをする専門家のこと。
企業の社会保険に関する法律を守り円滑に社内の制度を整備することが役割で、法律や手続き以外でも社内の労働問題の相談窓口として活躍しています。
企業を健全に運営していくために必要とされている資格であり、専門性や取得難易度は高いですが、企業から求められている資格です。
教育訓練給付制度のポイント
教育訓練給付制度を利用する際は、難易度と費用が高い資格に利用することで最大限その恩恵に預かることができます。教育訓練給付制度を利用する際の注意点など、ポイントを見ていきましょう。
種類によって雇用保険の被保険者期間が違う
一般教育訓練給付金を受け取る条件は、受講日が開始する時点で雇用保険の被保険者期間が3年以上の方です。
ただし初めて教育訓練給付制度を利用しようとしている人は、被保険者期間が1年以上あれば条件を満たします。この制度は同一人物が複数回教育訓練を受けることはできないため、前回の訓練から3年以上期間を空ける必要があるのです。
専門性が高い分、一般教育訓練給付金よりも支給される条件が厳しく、受講日開始する時点で雇用保険の被保険者期間が10年以上必要になります。
初めて教育訓練給付制度を利用する場合は、2年以上の被保険者期間が必要です。
会社に知られることはない
教育訓練給付制度は雇用保険に関する制度ですが、会社を一切挟まずに申請し給付金が受給できるため、会社は制度を利用していることはわかりません。企業の中には、この制度を有効活用するために従業員に推奨していることもあります。隠す必要はないのかもしれません。
難易度が高い資格で利用するとお得
一般的に難易度が高い資格の方が、受験料や勉強する費用は高くなる傾向にあります。
そのためまず低いランクの資格は自腹で受験し、難易度が高い資格を受験するときに教育訓練給付制度を利用すると、受けられる給付金の割合が多くなるのでおすすめです。
難易度が高い資格は、低いランクの資格を取得していることが受験資格になる場合もあるため、受験資格と金額を確認しておきましょう。
不正受給すると厳しい罰則がある
教育訓練給付制度を利用するためには、対象となる講座を修了しなければなりません。しかし修了していないのにも関わらず教育訓練給付制度に申請した場合、不正受給とみなされる可能性があります。
もし不正受給になると不正受給の金額を返還し、さらに返還額の2倍の金額を納付しなければなりません。
また、会社の補助を利用して資格取得し、教育訓練給付制度を利用した場合も不正受給になるので注意してください。
教育訓練給付制度まとめ
教育訓練給付制度至急の申請方法と対象講座を詳しく解説してきました。
- 2018年1月から始まった制度で認知度はまだ低い
- 雇用保険に一定期間加入していることが条件
- 申請・手続きはハローワークで行う
- 人気の資格も対象となっているので使いやすい
教育訓練給付制度を利用すれば、資格の取得や専門学校への入学費用の一部を国が負担してくれるため、自身のキャリアアップに繋がりやすいです。全ての講座が対象となっているわけではないので、事前によく確認してください。
資格取得のための負担金額を軽減できるのでおすすめですが、申請期間は受講修了日から1ヶ月以内と短いので、余裕を持って申請するようにしましょう。