失業保険は失業期間中でも収入を得られる制度ですが、どれくらいの金額をどれくらいの期間もらえるか具体的には把握できていないのではないでしょうか。
失業手当には自己都合退職と会社都合退職があり、それぞれで受給条件が変わるため注意しておかなければなりません。失業手当の支給額は前職の5割から8割程度で、受給期間は90日から最大で330日になります。
退職する前に失業手当について知っておけば計画的に就職活動が可能になるので、失業手当の計算方法や支給条件を理解しておきましょう。
この記事の目次
失業手当を調べてから退職しよう
失業保険は労働者を守る制度であり、いくつか条件をクリアした受給資格者であれば失業期間の収入を補填してくれ、その際には被保険者証などの書類が必要です。
無収入状態から脱却するための救済制度である失業保険はいったいどのようなものなのか、概要を確認していきましょう。
自己都合退職の場合の失業手当
一般的に、会社を退職する際は会社都合ではなく自己都合で退職する方のほうが多く、自己都合で退職する場合の失業手当は、どのようなものなのか見ていきましょう。
自己都合退職とは
自己都合退職とは自発的に退職を申し出て離職することで、自己都合退職に正当な理由がある場合と、正当な理由がない場合で受給条件が変わります。正当な理由がある場合の自己都合退職とは、労働できない何らかの事情があり自ら退職することです。
例えば、配偶者の転勤や家族の介護、病気や怪我による就業困難といった事情が当てはまり、正当な理由がない場合の自己都合退職とは、転職や企業、会社への不満が原因で退職した場合です。この自己都合退職の場合は退職のタイミングを自分で選べるので、他のパターンよりも失業保険の条件は厳しく、受給できる金額も少なくなりやすいため注意しておかなければなりません。
また、依願退職の場合も自己都合退職となるため注意が必要です。
受給条件
同じ自己都合退職の場合でも、正当な理由の有無によって受給条件が変わります。自己都合退職の場合でも、正当な理由があれば待機期間後すぐに失業手当の支給が開始されます。
自己都合退職の場合の受給条件
正当な理由なし | 被保険者期間が、離職した日以前の2年の間に1年以上あること |
7日間の待期期間後、3ヶ月間の給付制限期間あり | |
正当な理由あり | 被保険者期間が、離職した日以前の1年の間に6ヶ月以上あること |
7日間の待期期間満了後、直ちに支給開始 |
会社都合退職の場合の失業手当
会社で勤務していると、会社の都合で退職しなければならないケースもあります。会社都合で退職した場合の失業手当について見ていきましょう。
会社都合退職とは
会社都合退職とは、
- 倒産
- 事業縮小による人員削減
- 有期契約の打ち切り
といった自分ではどうすることもできない理由で離職することです。自己都合退職の正当な理由がある場合と同様に、自分で離職するタイミングを決められないことが大きなポイントになります。
受給条件
会社都合で退職した場合、失業手当の受給条件も自己都合退職の正当な理由がある場合と同じです。解雇された場合でも、懲戒解雇の場合は対象外となるので注意してください。
会社都合退職の場合の受給条件
会社都合退職 | 被保険者期間が、離職した日以前の1年の間に6ヶ月以上あること |
7日間の待期期間満了後、直ちに支給開始 |
失業手当の支給額
失業保険を利用する際に重要なことは、受給できる金額を想定し計画を立てること。失業手当の手続きを行った際に、どれくらいの金額を受け取れるのか見ていきましょう。
大体前職の5割から8割
失業手当で受け取れる金額の計算方法は非常に複雑です。
大まかな受給金額は、退職する直前の6ヶ月分の給料がベースになり、1ヶ月分の5割から8割となります。受給者の年齢や以前の賃金によって給付率が変わるため、注意してください。
計算方法
具体的な失業手当の計算方法は、
となります。
給付率は年齢によって変わり、一般的には50%から80%になりますが、60歳から64歳の方は45%から80%です。
失業手当の支給期間
失業手当の支給期間は、被保険者期間と離職したときの年齢によって決まります。
また、支給期間は自己都合退職と会社都合退職の場合によって変わるので、何日ほど支給されるのか確認しておかなければなりません。
自己都合退職の場合
自己都合退職の場合、支給期間も正当な理由の有無によって変わります。
正当な理由がある場合は会社都合退職と同じ日数受給でき、正当な理由がない場合よりも長く受け取れる可能性が高いです。
自己都合退職(正当な理由がない場合)の受給期間
被保険者期間 | ||
1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
90日 | 120日 | 150日 |
会社都合退職の場合
会社都合退職、正当な理由がある自己都合退職の場合は、被保険者期間だけでなく退職したときの年齢も大きく関わっています。
会社都合退職・正当な理由がある自己都合退職の場合の受給期間
被保険者期間 | ||||||
1年未満 | 1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 | ||
離
職 時 の 年 齢 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上
35歳未満 |
90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上
45歳未満 |
90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳以上
60歳未満 |
90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上
65歳以上 |
90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
失業手当の注意点
失業保険は失業時でも収入を得られる頼もしい制度ですが、場合によってはすぐに受給できない場合もあります。失業手当に関する注意点を見ていきましょう。
支給されるまでに3ヶ月かかることもある
自己都合・正当な理由がない場合は失業手当の申請を行い受領されたとしても、7日間の待機期間を経過後、3ヶ月間の給付制限期間があります。つまり退職してから失業保険を受け取るまで、最短でも3ヶ月と1週間ほどの時間が必要です。
それまでの3ヶ月弱の期間は無収入状態となるため、貯金を切り崩すかアルバイトなどで収入を得なければなりません。短期間で転職が成功しそうな場合は、申請しても無駄になる可能性があるため注意しておきましょう。
会社都合なのに自己都合と書かれることもある
会社都合の退職であっても離職票に自己都合退職と記載される場合、問い合わせるべきでしょう。元の勤務先の単純なミスであるケースもあります。
失業手当はハローワークで手続きを行いますが、離職票を元に申請を進めるので訂正しなければそのまま申請が進んでしまいます。
また、訂正してから申請をすると受給まで時間がかかってしまうので、ハローワークの担当者に事情を説明して手続きを進めてもらいましょう。
申請しない方が良い場合もある
すぐに再就職ができそうな場合は、失業保険を申請しない方が良い場合もありますが、それには理由があります。雇用保険に加入していた期間によって受給金額や受給期間が有利になり、退職してから再び雇用保険に加入するまでの期間が1年以内であれば、被保険者期間を合算することが可能です。
そのため、1年以内に就職できそうであれば、失業保険を使わない方が良い場合というのもあります。
辞める前に知っておきたい失業手当まとめ
失業保険の受給条件や、その計算方法について解説してきました。
- 失業手当は失業期間を保障し、再就職を支援するもの
- 自己都合と会社都合の退職で条件が異なる
- 失業保険の支給額は大体前職の5割から8割
- 受給できる期間は年齢と被保険者期間によって決まる
失業保険は条件を満たしていなければ、受け取ることができません。
また、自己都合の場合は退職してから失業保険を受け取るまで、最短でも3ヶ月以上かかります。
失業保険は非常に便利な制度ですがすぐにお金が入金されるわけではないため、しっかりと自分の受給条件を確認しておく必要があります。