奨学金を滞納し、自己破産する人はゼロではなく一定数存在しており、年々その数は増加傾向にあるため、返せない原因を把握して奨学金返済の方法を考える必要があります。
奨学金を返せないという事態になったときにはどのようにすれば、滞納せずに済むのでしょうか。
奨学金を返せない場合、どのような方法があるか、キャッシングなどの借金が有効なのかを解説していきます。
まずは、奨学金返済ができなかった場合にどうなるのかを確認しておきましょう。
奨学金が返せないとどうなる?
奨学金が返済できずに延滞してしまいそうな人のために、奨学金が返せないとどうなるかをわかりやすく解説していきます。
延滞金が発生する
まず、奨学金も他の金融機関からの借入れと同様に延滞金が発生してしまい、支払金額が増えてしまいます。
延滞金は利用している奨学金の種類によって変わるため、利用している内容をよく確認しておくと良いでしょう。
【第一種】※第一種の場合は奨学金の採用日が関わってきます。
採用日 | 各種条件 | 滞納日 | 利率 |
平成17年3月以前
(6ヶ月毎に発生) |
平成10年2月以前に貸与が終了
年1回払込用紙で返還 |
平成26年3月31日まで | 5% |
平成26年4月1日以降 | 2.5% | ||
平成10年2月以前に貸与が終了
口座振替で返還 or 平成10年3月以降に貸与が終了 |
平成26年3月27日まで | 5% | |
平成26年3月28日以降 | 2.5% | ||
平成17年4月以降
(1日毎に発生) |
平成26年3月27日まで | 10% | |
平成26年3月28日以降 | 5% |
引用元:www.jasso.go.jp
【第二種】※第二種は奨学金採用日に関係なく、滞納1日毎に延滞金が発生します。
各種条件 | 滞納日 | 利率 |
平成10年2月以前に貸与が終了
年1回払込用紙で返還 |
平成26年3月31日まで | 10% |
平成26年4月1日以降 | 5% | |
平成10年2月以前に貸与が終了
口座振替で返還 or 平成10年3月以降に貸与が終了 |
平成26年3月27日まで | 10% |
平成26年3月28日以降 | 5% |
引用元:www.jasso.go.jp
延滞金のデメリットには「督促」があり、書類による通知か自宅に電話がかかってきますが、職場に通知がくることもあるため注意しなければなりません。
返済できない場合信用情報機関に載ってしまう
奨学金を延滞すると信用情報機関に事故情報が載ってしまう可能性があり、人生に大きな影響を与えてしまいます。
延滞すると信用情報機関に載るのは、最も多くの大学生が利用している「日本学生支援機構」(JASSO)で、事故情報として登録されるには、3ヶ月連続で滞納することが条件です。
クレジットカードや住宅ローンを組めなくなる
奨学金の利用がクレジットカードや住宅ローンの審査に影響することはほとんどありませんが、延滞してしまい事故情報(ブラックリスト)に登録されると、審査に落ちてしまう可能性が高くなり、利用限度額も低く設定されます。
ブラックリストに載ると、延滞解消から「5年間」は残るため、延滞歴があると住宅や車を購入できなくなるかもしれません。
どうしても奨学金を返せない場合はどうする?
返済期日が迫っていても返済に充てられるお金がない場合はどのようにすればよいか、ここから解説していきます。
減額返還制度を使う
減額返還
減額返還制度は、災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な方の中で、当初約束した割賦金を減額すれば返還可能である方を対象としています。
引用元:日本学生支援機構
この制度を使うと毎月支払うべき奨学金の金額を2分の1、もしくは3分の1に減らすことができ返済しやすくなります。
減額返還制度を利用しても奨学金の合計支払額は変わらないため、不安がある人は申込んでおくと良いでしょう。
利用条件
利用できるのは「新卒」「傷病」「失業中」「災害」「経済困難」に該当する人だけで、奨学金が返せない健康な人の場合は、「経済困難」で申請する必要があり、この場合は税込年収が325万円以下でなければなりません。
※給与所得者以外は所得金額が225万円以下。
利用できない人
奨学金を滞納していると利用できないため、解消してから申込みをする必要があり、減額返還制度適用中に2ヶ月連続で滞納すると、適用中止になり延滞金の支払い制度適用前の返済額を支払わないといけません。
自分の収入によって返済金額が決まる「所得連動変換方式」で返済している人も、制度を使うことができないため要注意です。
返還期限猶予制度を使う
返還期限猶予
災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合は、返還期限の猶予を願い出ることができます。
引用元:日本学生支援機構
既に奨学金の支払いを延滞している人も利用することができるため、ぜひ内容を知っておくと良いでしょう。
返還期限猶予制度のメリット
一度審査に通れば1年間返済期限を延長することができ、最大10回、10年間延長することが可能です。
返済期限猶予制度を使ったとしても、合計の返済額は変わることはないため、金融機関からの借入れよりもメリットがあります。
利用条件
利用条件は基本的に減額返還制度と変わらず、一定の条件を満たす必要がありますが、条件が厳しくなっているため注意が必要であり、税込年収も300万円以下でなければ条件を満たすことができません。
※給与所得者以外は所得金額が200万円以下。
利用の注意点
支払金額は全く変わることがないため、返済が完了するまでの期間がそのまま長くなってしまい、奨学金によるストレスは長く続くことになるでしょう。
既に延滞しておりこの制度に申込んだ場合、審査に通過するまでに1ヶ月から2ヶ月近くかかるため、その間は督促の通知が止まりません。
奨学金の減免制度
該当する場合はほとんどありませんが、奨学金の返済が免除・減額になることもあるため、念のため知っておきましょう。
返還免除
奨学生であった方が次に該当する場合、願出により奨学金の返還を免除する制度があります。
死亡又は精神若しくは身体の障害により返還ができなくなったとき。(第一種奨学金(無利息)・第二種奨学金(利息付き))
引用元:日本学生支援機構
弁護士に相談して債務整理を行う
どうしても奨学金を返済できない場合は、弁護士に相談し債務整理を行うことも可能です。
債務整理には大きく分けて「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあります。
任意整理
任意整理とは、裁判所を通さずに当事者間で交渉し、返済の方法や金額を決めることですが、奨学金の場合には効果がありません。
将来発生する予定の利息分を減額して返済する方法であり、利率が低い奨学金では大幅な返済金額の減額は期待できないうえ、日本学生支援機構は交渉に応じない姿勢を取るため、失敗しやすいです。
個人再生
個人再生とは裁判所を通して借金を減額する方法であり、奨学金の返済金額を5分の1程度まで少なくすることが可能で分割によって返済しますが、残りは保証人に請求されてしまいます。
返済するために継続した収入が条件で、再生計画を提出しなければならず、ローンなど組めなくなることがデメリットです。
自己破産
収入などがない場合は自己破産になり、全ての借金が免除されますが、財産を失ってしまいます。
人的保証制度を使う
人的保証制度
連帯保証人および保証人として機構が定める条件を満たす人に奨学生本人が依頼し、奨学金の返還について連帯保証人および保証人を引き受けてもらう制度です。
引用元:日本学生支援機構
この制度を利用すると本人の奨学金返済分は減りますが、連帯保証人となった家族などに支払い責任が移るため注意しましょう。
保証人は奨学金を利用するときに必要で、人的保証制度を使わない場合は機関保証制度を利用することになり、毎月奨学金の保証料の支払いが必要となります。
金融機関から借金する
人的保証制度が使えず債務整理をしたくない場合は、奨学金を借金で返済する方法もあります。
使い方によっては奨学金を返済する有効な方法になりますが、その分デメリットも大きいため注意が必要です。
奨学金を返せない場合、キャッシングは有効?
金融機関から借金して奨学金を返済する場合、キャッシングやカードローンなどが該当しますが、有効なのかどうかを説明していきます。
キャッシングのメリット
奨学金を返済するためにキャッシングを使うときのメリットを押さえておきましょう。
一時的な返済なら有効
既に奨学金を延滞してしまっており、ブラックリストに載ってしまうという場合は、一時的にキャッシングで資金を調達することは有効といえるでしょう。
第二種奨学金であれば、短期間でも奨学金を延滞してしまうと遅延損害金が発生してしまうため、キャッシングで返済することもおすすめです。
奨学金自体は審査に影響しない
奨学金の返済でキャッシングを使うメリットは、奨学金自体はキャッシングを利用する審査に影響せず、素早く資金調達できます。
奨学金以外でローンを組んでいる場合は、キャッシングの審査対象になるため注意することも大切。
キャッシングのデメリット
キャッシングも借金であるため、デメリットを把握して慎重に利用することが重要です。
奨学金を延滞すると審査に通りにくくなる
既に奨学金を延滞しているとブラックリストに載ってしまっている可能性があり、キャッシングの審査に落ちてしまいやすくなります。
キャッシングの金利は高い
キャッシングを使う最大のデメリットは奨学金よりも金利が高くなり、合計の支払い金額が増えることです。
奨学金の金利は1%にも満たないため低いですが、キャッシングの金利は10%以上し、長期間利用すると金利による利息支払い分が遅延損害金よりも高額になってしまいます。
遅延損害金とのバランスを考えることが大切
一時的にキャッシングを使うことで遅延損害金を防止し、ブラックリストに載ることを防ぐことが可能です。
しかし、キャッシングを長期的に利用すると自転車操業になってしまい、利息分が膨らんでいき、結局支払う合計金額が多くなっていくでしょう。
奨学金を延滞してしまう影響と、キャッシングによって生まれる金利分の負債のバランスをよく考えることが大切です。
奨学金を返せない場合の方法まとめ
奨学金をどうしても返せないときには、手遅れになる前に対処することが大切であり、主に以下の手段で対応できるでしょう。
- 減額返還制度を使う
- 返還期限猶予制度を使う
- 弁護士に相談して債務整理を行う
- 金融機関から借金する
この中でも一時的な対策の方法としてキャッシングがおすすめですが、キャッシングのような高金利なサービスを利用が慢性化すると、返済しなければならない金額が増えてしまうため要注意です。
奨学金の返済で困りそうな場合、「減額返還制度」や「返還期限猶予制度」の利用が有効で、条件と審査がありますが、奨学金の負担を大幅に軽減できます。
奨学金に関する制度を知り、効果的で計画的な返済計画を立てていくと良いでしょう。